2022年1月から、改正電子帳簿保存法が施行されます。
すでに、対応済みの企業さまも多いと思いますが、改めて、どう対応すればいいのか?についてまとめましたので、ご参考ください。

電子帳簿保存法改正2022の全体図

今回の法律改正指針を、とても平たく言うと

  1. 世界から、「遅れてるね」なんて言われてしまっている日本。国としては電子化・DX化をもっと推し進めたいんだ!
  2. その一環として、会社帳簿の電子保存化へのハードルを下げるので、企業のみなさん!ぜひデジタル化に取り組んで欲しい!(これまでは、そのハードルが高かったですよね。。。ですので緩和します!)
  3. でも不正はダメですよ。だから不正に対しては厳罰化させてもらいます。
    でも電子化推進したら御社にとってもかなりコスト削減になってメリット大きいと思いますよ!
  4. 電子化して、効率的になったら働き方改革にもなるでしょ?

こんな背景とメッセージだと思います。

そして、今回の法改正のエッセンスをまとめた図としては、以下の図が最もポピュラーものと思います。書類や情報別にどのように対応すればよいかをまとめられたものです。


この図を参考いただきながら、年明けから対応していくべきポイントについていくつかお伝えいたしますので、ご参考ください。

主要会計サービス各社の対応

既になんらかの会計システムを導入している企業さまが多いと思いますので、まずは会計システムの対応についてまとめます。
「いま使っている経理・会計システムのバージョンアップなどで対応する
これが基本対応です。

TKC/FXシリーズ

TKCをお使いの企業さまも多いと思います。

TKCの電子取引対応ガイド、というページを設けて、分かりやすく電子帳簿保存法の改正とその対応について解説していらっしゃいます。

https://www.tkc.jp/lp/ebooks/denshitorihiki/

「電子帳簿ソフト法的要件認証」第1号の認証を取得されたことをアピールしていますので、早い段階から対応準備をされていたのだと思います。

オービック/勘定奉行

2021年10月には、電子帳簿保存法に完全対応するリリースを出しています。

仕訳明細にスキャニングデータやPDFを添付し、明細に紐づけて管理できる機能を紹介しています。とても分かりやすいですね。
勘定奉行をお使いの企業さまは準備万全かと思います。

詳細はこちら

https://www.obc.co.jp/landing/denshihozon

なお、勘定奉行10・11をお使いの企業さまは、

https://www.obc.co.jp/landing/denshihozon-11

こちらから参考されるとよいかと思います。

弥生/弥生会計

電子帳簿保存法あんしんガイド

https://www.yayoi-kk.co.jp/lawinfo/denshichobo/index.html

こちらに電子帳簿保存法への対応についてしっかりまとめていらっしゃいますので、弥生会計をお使いの企業さまはこちらをチェックしてください。

ポイントは「証票管理サービス」は2022年春頃にリリースされるという点。
このサービスがリリースされることで、請求書PDFや領収書データなどの証票保管・検索が行いやすくなるようです。

freee/クラウド会計ソフト feee

100万社以上の会社&個人事業主が利用しているクラウド会計ソフトです。
中小企業のみなさまにも、freeeをお使いの方は多いのではないかと思います。

freee利用の企業さまは、電子帳簿保存法についてのシステム的な対応は、既に対応は完了している状態と言えます。

https://www.freee.co.jp/cloud-erp/electronic-book_2/whitepaper-form/

ユーザ登録が必要となりますが、電子帳簿保存法対応についてまとめているこちらの資料は非常にわかりやすいと思います。

具体的な対応に困った時は、国税庁の一問一答を確認しましょう!

会計システムメーカーさんや、士業の方、ブロガーさんなど、たくさんの方が電子帳簿保存法改正についてわかりやすい記事を書いており、どれもとてもよくまとめられていて素晴らしいと思います。
しかしそれでも、「うちの○○の処理はどうすればいいの?」という、とても具体的な対応について疑問を感じるケースもあると思います。

こういう場合、まずは、顧問税理士さんなどの専門家に質問していただくのがよいと思います。

しかし、税理士さんに聞くのもまだ何をどう聞いていいのかも分からない、といった状況でしたら、一番大元の情報を確認するのが、間違いないと思います。

それは、国税庁の情報です。

その中でも、一問一答はとても具体的な対応についての質問に、国税庁が答えてくれていますので、この資料を参考にされるとよいと思います。

もっとも、国の発信する文書ですので、どうしても表現が固く、難しそうな表現であったり、図解などもありませんので読みにくいと感じてしまいますが、落ち着いてゆっくり確認すると、みなさんの会社でも適用できるケースが紹介されています。

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/4-3.htm

こちらがそのページです。


一問一答のファイルリンクは以下です。

  1. 電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】
  2. 電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】
  3. 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】
  4. お問合せの多いご質問

この一問一答の中から、いくつか具体例をご紹介します。

紙でもらった領収書や請求書は結局、紙で保存していても大丈夫?

結論は、大丈夫です。

電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係」の資料ページ番号4Pに「帳簿書類の形態別保存の可否一覧」でまとめられています。

紙でもらった領収書や請求書は、これまで通り、紙のまま保存して、スクラップブックなどに証票を貼って保管していても問題はありません。

しかし、今回の法改正の意味や意図を踏まえると、法改正を機に、御社でも経理・会計の電子化、ペーパーレス化に本格的に取り組む良い機会だと思います。

紙でもらった領収書や請求書をスキャンして電子保存した後は、廃棄していいの?

結論は、廃棄してもOKです。

電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」の問3を確認ください。

ただし、スキャニング保存する時は

  • 最長約2か月、概ね7営業日以内にスキャニングすること
  • 明瞭であること
  • 取引日付、取引相手、金額の3点で検索できるように保存されていること
  • タイムスタンプを付与すること※
  • バージョン管理ができていること※

主にこの5つの条件を満たしている必要があります。(詳細な条件はこちらの問10を参照ください)

※印の「タイムスタンプ」。これは「時刻認証局を通じた第三者による時刻付与されたもの」というルールがあります。
何か難しい感じがしますが、その通り、難しい感じです(笑)

第三者が公式に証明してくれる時刻という意味ですので、これを、自社だけでやろうとするのは大変です。
だから、現在お使いの会計システムの機能で対応したり、証票管理するソフトやサービスを使うのが実際的な所となります。

もうひとつの※印の「バージョン管理」も同様です。
自分で改変などのバージョン管理をするのは、そのやり方も含めて難しいでしょう。
ですので、会計システムの機能や、証票管理ソフト・サービスで対応することになります。

電子保存はよく分からなくて大変だ。PDFで送られてきた請求書や領収書をこれまで通り、紙で出力して保存してそれを証票としたいのだけど、それはダメなの?

結論を言いますと、2022年1月以降は、電子データがオリジナルな証票なのに、わざわざプリントアウトしたものを証票としては認めない、ということになりました。
ですので「ダメ」なのです。

ひとまず、大決定はこのようになりました。

しかし、PCが壊れた時はどうすればいいのか?、現場担当のリテラシーの課題で電子保存対応が難しい、といった問合せが多数あったようで、上記が原則ではありますが、電子データをプリントアウトものを会社の正式な証拠だと主張したからと言って、ただちに青色申告の承認取り消しをしたり、経費として認めないぞ!とはならないことになりました。

お問合せの多いご質問の補4でもこの点に触れていますし、先日の12/10に発表された、令和4年税制改革大綱では、やむを得ない事情でもともと電子的に発生した証票を電子保存できない場合で、所轄税務署がその理由を認定した場合は、電子証票を紙でプリントアウトしたものを証票として認める、という2年間(令和5年12月31日まで)の経過措置が発表されました。

「やむを得ない事情」がどのようなものか?というのが気になりますが、本記事発表時点ではまだ発信されておりませんので、今後発信されると思います。

令和4年税制改革大綱([第二 令和4年度税制改正の具体的内容]-[六 納税環境整備]-[5. その他(国税)(8)]を参考ください)

まとめ

中小企業経営においては、人材や資金面など、大手企業さまと比べると、とかく人的リソースは不足しがちで、それゆえに、IT投資はなかなか進まないという性質があります。
これは、全国同じような状況です。

しかし、中小企業であっても、大手企業以上に特徴的な事業やカルチャーを持ち、大手企業以上の高収益体制を実現している企業もまた、多くいらっしゃいます。
中小企業白書を見ると、高収益・好業績を達成している中小企業の特徴のひとつは、いわゆる「IT投資に積極的」という特徴があります。

今回の電子帳簿保存法改正は、国のメッセージとしては、

  • ペーパーレス化を促進せよ
  • デジタル化を促進せよ
  • 働き方改革・効率的な働き方を促進せよ

といったメッセージが込められてはおりますが、「国が言うからしょうがなく」ということではなく、元気で活発で、きちんと収益をあげる中小企業になるためにも、こういった機会をきっかけにデジタル化を推進し、新しい体制に取り組んでいくことはとても重要と思います。

電子帳簿保存法への具体的な対応は年が明けてから。という企業さまも多数いらっしゃいますので、今回の情報が参考になればと思います。

兼松経営は、財務会計・戦略・マーケティングをベースとした中小企業専門の総合コンサルティング企業です。

今回の法改正に纏わる、経営基盤対応・社内の運用定着といった課題についても、お気軽にご相談くださいませ。